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世界を圧倒したZero Fighter:『零式戦闘機』

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出典:Cliff

『零式戦闘機』新潮文庫

著者:吉村昭

 

太平洋戦争開戦前から、何年にも渡って圧倒的戦果を収め続けた零戦の開発そして盛衰を描いた本

 

零戦日本海軍が生んだ当時最高の戦闘機として有名ですね。「永遠の0」や「風立ちぬ」などのヒットした映画でも取り上げられ、その活躍を知っている人も多いと思います。

 

この本では、多くの歴史文学を手がけた吉村氏が、零戦の開発から盛衰を、零戦を開発した三菱重工名古屋航空機製作所の人々の視点から描いています。

 

本書の要約

太平洋戦争開戦前、日本の航空技術は他の国に大きく水を開けられていました。日本海軍は日本独自の戦闘機の生産を指示、三菱重工名古屋航空機製作所は堀越二郎を設計主任者とし、海軍が示す法外な性能要求を満たす日本独自の新型戦闘機の開発に着手しました。

 

速度性能や航続能力、上昇力、空戦能力、兵装、など互いに相殺し合うあらゆる面で当時の世界最高機を大きく上回る性能を目指す戦闘機の開発は当然ながら困難を極めました。誰しもが不可能と思った任務でしたが、新技術と新素材を用い、独創的な設計を施し試作とテストを繰り返し、死亡事故や設計変更も乗り越えて、製作チームは驚異的な性能を持つ戦闘機を完成させました。

 

太平洋戦争開戦後、零戦日本海軍の主力戦闘機としてアメリカ軍の戦闘機を圧倒し、「Zero Fighter」として恐れられました。零戦はアメリカ軍が次々と開発する新型機にも圧倒的優位を保ち続けましが、日本軍全体の戦況の悪化と機を一にするように、アメリカ軍による不時着機の押収や2対1の非格闘戦闘などによって攻略を許し、ついには終戦を迎えました。

 

伝説となった初陣

零戦の初陣は、昭和15年中国の重慶上空での日本空軍と中国空軍との戦闘でした。零戦13機に対し、相手はソ連の誇る戦闘機イ15、イ16の27機。わずか10分間の激烈な戦闘後、残ったのは零戦13機のみ。奇跡的な戦果をあげ、零戦の性能の高さを国内外にまざまざと見せつける結果となりました。あまりにも非現実的な結果に、アメリカなどは結果報告を誤報とみなしたそうです。

 

まとめ

日本のものづくりが世界に戦いを挑んだ物語でした。昔から日本人はハードウェア製作が得意だったというのは工学部の人間としては嬉しいですが、零戦の成功は堀越氏の才能に依っている部分が大きいようです。堀越氏が零戦について書いた本があるようなので、堀越氏の内的体験やより詳細な技術的な記述を期待してそちらも読んでみたいと思います。