The Room of Requirement

必要な人が必要な時に必要なことを

なぜあなたは不合理に行動する?:『予想どおりに不合理』

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出典:Gideon

『予想どおりに不合理』ハヤカワ文庫

著者:ダン・アリエリー

 

行動経済学があかす「あなたがそれを選ぶわけ」

「なぜ人々はスターバックスに列をなすのか」から「パーティーで魅力的に見られるためには」まで、不合理で滑稽な人間の行動を予測する術を、数多くの社会実験と著者のユーモア溢れる経験談を交えながら教えてくれます。私たちが無意識にしてきた経済行動は、行動経済学を駆使すればはほとんど確実に予測可能なようです。自分の無意識の不合理な行動を理解すれば、日常生活のドラブルを避け、賢明に買い物し、周囲の人をちょっとだけ自分の思うように動かせるかもしれません。

 

 

本書の概要

第1章 相対性の真相

私たちは絶対的価値ではなく相対的価値で判断します。だから大半の人は、三択が用意されれば中程度のものを選ぶし、レストランのメニューにかなり高価な料理を一品加えるだけで他の高価な料理が売れやすくなります。

また、我々は比べるのが大好きですが、比べやすいものを比べ、比べにくいものを無視する傾向が有ります。だから商品Aと商品Bの他にAと類似だがAよりは劣る商品A’を用意すればAの売れ行きが伸びます。給料に対する男の満足度は、妻の姉妹の夫(比べやすい相手)より多く稼いでいるかどうかで決まります。

 

 

第2章 需要と供給の誤謬

市場価格は独立な需要と供給のバランスで決定されている、のではないようです。私たちは恣意的に設定された価格のアンカリングによって自分の価格判断を影響されています。だから需要がなかったタヒチの黒真珠は最初に法外な値段をつけることで高級品になりました。

そして、我々は最初のアンカリングに強く影響を受け続けるため、“自分自身に群れ集う”ような行動をとります。スターバックスの列に並ぶ人は、実は過去の自分の後ろに並んでいるのです。

 

第3章 ゼロコトストのコスト

私たちは、「無料」の魅力にすぐに屈してしまいます。だからAmazon送料無料を勝ち取るために無駄な買い物をしたり、もっと他にできることがある休日の時間を入館無料日の人でごった返した美術館の列の中で無為に過ごしたりしてしまいます。健康を意識して3キロカロリーより0キロカロリーのビールを選び、フライドポテトをもう一皿注文してしまうはめになります。

 

第4章 社会規範のコスト

私たちは市場規範と社会規範のどちらかに従って判断します。だから少しの報酬を得る仕事より無料のボランティアに快く熱心に取り組むし(社会規範に従っている)、遅刻に罰金を課すと遅刻が増えることがあります(市場規範に従っている)。社員・消防士・警察官・教師・恋人をやる気にさせるには市場規範ではなく社会規範に訴えなければなりません。

 

そして、以下のように話は展開します。

 

第5章 無料クッキーの力

第6章 性的興奮の影響

第7章 席の橋の問題と自制心

第8章 高価な所有意識

第9章 扉を開けておく

第10章 予測の効果

第11章 価格の力

第12章 不信の輪

第13章 わたしたちの品性について その1

第14章 わたしたちの品性について その2

第15章 ビールと無料のランチ

 

伝統的経済学と行動経済学

バーで4種類のビールを無料で提供する実験を行いました。客のグループに対して口頭で注文を取っていく場合と紙で各々の注文を取る場合をテストします。

結果を分析すると、口頭での注文の方が紙での注文より注文されるビールの種類が多く、また自分の判断への満足度は低い傾向があることがわかりました。これはアメリカでの実験結果で、香港での実験では面白いことに注文されるビールの種類が少なくなりました。この場合でも自分の判断への満足度が低いことは同じでした。

どちらの実験でも客は伝統的な経済学が仮定する合理的な行動を取っていません。判断に必要な情報を全て知っていなければ、目の前の様々な選択肢の価値を計算することもできず、選択による結果を何にも邪魔されずに評価することもできません。このような不合理な行動を予測しようとするのが行動経済学だそうです。

 

まとめ

私たちが行う判断の多くは伝統的な経済学が想定するような合理的なものではなく、不合理なものであるようです。しかしその不合理性は予測可能なものだそうです。この本で紹介される多くの“不合理な”人間の行動は僕にも当てはまることがたくさんあって、著者に自分の不合理さを直接指摘されているようで大変面白かったです。